「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

干刈あがたさんについて

私が大切に再読を繰り返している作家の一人です。


女や家族というものの複雑さを、時に厳しいほど率直に描きつつも、温かい眼差しと希望の光を常に抱き続けた・・・そんな印象を作品から感じます。


自分がもっと若い頃は、もう少し漠然とした好感でした。けれども結婚、出産、育児と干刈さんが辿ったルートを経てみると、彼女の切実さがより一層身近に迫って感じられるようになり、ますますその魅力を味わえるようになりました。作家活動が十年間しかなかったため、作品も多くはなく、文庫化されたものでも既に殆んど出回っていないのが非常に残念です。


古本屋として、いつか専門的に扱えるようになりたいと願い、見つけると購入するようにしています。


有名というか、話題を呼んだのは『黄色い髪』だと思いますが、まずは・・・と私が周りに薦めてきたのは『しずかにわたすこがねのゆびわ』(福武書店)でした。何人かの女性の生きていく姿が描かれており、それぞれの人物像や考え方は違えど、皆少しずつは干刈さんの分身であるかのようにも私には感じられる作品です。ひとりひとりに、生き生きと血の通った感じがします。女性たちは皆、草花の名前なのも象徴的で素敵です。


もうすぐ干刈さんの命日です(享年49歳)。「コスモス忌」と名付けられ、毎年9月の命日に近い土曜日に法要が行われているようです。私はまだ訪れたことがないのですが、1998年に青梅市で記念展があったときには行き、所縁の品々等を感慨深く拝見しました・・・。


・・・干刈さんの話題になると、止まらなくなる気がします。作品の魅力の割に、読まれている度合いが少なすぎる気がしてなりません。最近では、佐伯一麦さんや長嶋有さんが自著で取り上げていらして、嬉しく思っていますが(まるで身内みたいですね・・)。

これからも、じりじり普及活動(?)をしていく所存です。どうぞよろしくお願い致します。

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