「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

芝木好子さんの作品


干刈あがたさん同様、この方の文庫作品も本当に見かけにくくなっています。
結構、各社から出ていたのですが・・・。


私と彼女との出会いは、大学入試。
国語の問題文に『湯葉』があったのです。もともと湯葉は好物でしたし、
僅かな出題箇所からも感じられた、自ら選んだ道を信念を持って生きようとする
主人公の姿に惹かれました。それが読み出すきっかけです。
文庫を入手したら、三部作だと分かったのも嬉しい発見でした。


彼女の作品の多くは、女性が何らかの技で独り立ちしていく過程が描かれています。
未婚既婚にかかわらず、皆どこかぴりっとした矜持をもっているところが
とても好きです。

また、湯葉作り・ガラス工芸・染色・陶芸・・・等、作品毎にみられる
魂の籠ったものづくりの様の描写も非常に魅力があります。
“工芸”とか“職人”といった言葉にふらっと反応してしまう私には、
こたえられません。

自身はまるで不器用なだけに、憧れの世界を追体験できる
絶好の機会となっているのかもしれません。



一押しというとなかなか決めかねるのですが、
『ガラスの壁』や『群青の湖』の厳しさなどは大変印象深いです。



独特の世界にどっぷり浸れる一人きりの時間・・・
彼女の作品からは、そんなものを与えてもらっている気がします。
そして、「女」を誇張した武器にするのでなく、
かといって捨ててしまうのでもない、
女性ならではの特長を生かす人生をも示唆してもらっているように
感じています。

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