「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

切り口いろいろ

私の好きな香咲弥須子さんに触れている!という理由で
図書館から借りてきた本を読み終えました。

『文学的商品学』(斎藤美奈子著、紀伊国屋書店)です。
「アパレル泣かせの青春小説」、「ファッション音痴の
風俗小説」等、章立てにも惹かれました。



注目の香咲弥須子さんは「とばす!オートバイ文学」の章で
取り上げられています。
いろいろな作家の作品を「オートバイ」で括り、
描写の特徴や男女の視点の相違等にも言及しており、
興味深く読みました。


バイクどころか車の免許も持っていない私ですが、
香咲さんの作品はなぜかとても好意と共感を持って
読めます。オートバイ描写が生き生きとしていて、
いかにも嬉しげに書いている姿が浮かぶような感じなのも
一因だと思います。また、そこに通ぶった押し付けがましさがないので。


斎藤美奈子さんは多少毒混じりではありますが、
全体としては香咲さんを評価していらっしゃるようなので
私としてはほっとしたりします。
この章に限らず、随所に皮肉めいた調子が効いており、
そこがまたこの本の魅力でもあります。
著者ご本人も述べておいでですが、ストーリーや人物像だけでない
小説の読み方もとても面白いですね。
視点が広がる気がします。
 


同様に小説を読む切り口を変えているのが
長嶋有さんの『電化製品列伝』(講談社)です。
タイトル通り、作品に登場する電化製品に軸を置いた
小説論というかエッセイで、そういう捉え方が大変新鮮でした。
こちらには干刈あがたさんの『ゆっくり東京女子マラソン』が
取り上げられていたので、喜んで読んだ次第です。


せっかく“繰り返し読む派”なのですから、
私もこれらのように新たな切り口を見出す力を得たいものです。

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