「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

或る休日

少し前の話。コロナ禍が少しだけ落ち着いていた頃。
久しぶりの休日、今のうちに行っておかねばと開店間もない時間を目指して向かったところ。


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若松河田の「備後屋」さんです。

来店目的はいろいろありましたが、とにかくここを巡る時間を堪能しようと心に決めて入店。

地下1階から4階まで、ジャンルを分けて民芸の世界が繰り広げられています。

しんと静まる店内の階段を上り下りするのは少々緊張しますが、丁寧に選ばれ、並べられたものたちの呟きが聞こえそうな気がして、耳を澄ましたりもしてしまいます。
じっくり眺めるのを静かに温かく見守って下さるお店の方たちの風情もありがたく好ましく、人への接し方として学ぶもの多し。いつもそう思います。と言っても、まだ片手で数えられるくらいの来訪数ですが。

日本の郷土玩具とマトリョーシカが仲良く並んでいたり、和の電気スタンドがアフリカのものであろう椅子に載せられて並んでいたりと、国内のみに絞らない自由な陳列もいいなあと思います。

今回の主目的の一つは陶器でした。たくさん並ぶのは2階です。時間をかけて、何往復かして見つめました。私は肉厚な、どちらかというと渋い色合いのものが好みで、合致するものが多くてどきどきします。ひとつでもふたつでもお気軽にどうぞ、という貼り紙も嬉しい。吟味の結果、お言葉通りに2枚の小皿を選びました。「まんじゅう皿」にいいかなと思って。

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それがこちら。画像ではわかりにくいのですが、何だか星空のような眺めだと感じて惹かれました。

贅沢な時間を過ごして、お会計。包装がとても丁寧なのもこちらの特徴の一つです。一生懸命選んだものたちが時間をかけて丁寧に包まれていく様は、見ていて嬉しいものです。

そんなに頻繁に訪れている訳ではないけれど、とても好き。そして、これからも忘れないであろう思い出のあるお店でもあります。

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空は青くて高くて、何だかちょっと切なく感じました。




こちらの地下一階には郷土玩具が並んでいます。
虎を買おう。それもまた目的の一つでした。


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兄弟のような虎たち。向かって右も招き猫ではなく、白虎だそうです。


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母に見せたら喜びました。




備後屋来訪のもう一つの目的は、次回の「民芸お菓子」の時間に生かせたらと思います。


なかなか過去の「民芸お菓子」の会の振り返りができず、申し訳ありません。

お菓子と鷽鳥

新年最初の「民芸お菓子」の会について。

この会は、昨年6月からアトリエ*ローゼンホルツさんで小さく、でも絶やさず続けています。
小さいようでいて私にとっては大きな支えになっています。


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この本がはじまりです。

新春、1月3日にEテレで「かわ善い民藝 いとお菓子」という番組も放送されました。 
上の本の著者の福田里香さんと菊池亜希子さんが各地を訪れており、大変旅心をそそられました。民藝熱も。


会について、自分が初回以来記事にできていないことに今更ながら驚いております。どういう心境だったのでしょう、私。追々綴って参りますが、まずは最新版を。


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箱も素敵。大小で色柄が異なるのも嬉しくなります。


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今回は、いろいろなお菓子も入った詰め合わせです。
メインはこちら。小さい箱の中身です。


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拡大。小さな餅菓子の並びの一画に、小さな鷽鳥が埋もれているのです。
サイズはこのくらい。


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頭部が巻き髪(?)のようになっている鷽鳥は、一月、しかも松の内以降限定です。

紫蘇風味のお餅も美味でした。




そして、今月の郷土玩具も鷽鳥たちです。
各地のものを揃えました。

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土地によって、鳥の姿が違うのはもちろんですが、鷽替え神事の日程や方法も異なるということは、この機会に調べて初めて知りました。

私にとっては亀戸天神社の鷽替えが一番馴染みがあります。父のコレクションも一番多いのは亀戸の鷽鳥です。数年前に目撃した時点でも、表通りに沿って大行列していましたので、鷽替え再体験はハードルが高そうです。ましてや今は・・・。 

他の鷽鳥は、太宰府湯島天神、上野五条天神、新井天神 北野神社、滝宮天満宮などのものです。


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今月のアトリエで、整列しております。




お菓子の話に戻ります。

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こちらは宝満山。プリンとマシュマロとあと表現できない何かの合わさったような、経験したことのない食感と味わいでした。美味です。

後日、他のお菓子も食べましたが、皆美味しかった。と同時に抱いたのは、餡や生地や全てに共通してどこか異国感のような印象でした。
これは九州の地のものだからでしょうか。私は九州を訪れたことがないのです。あちこち巡ってみたいという思いが増しました。



「民芸お菓子」の会では、可能なときは駅弁を用意しています。通常は東京駅構内の「祭」で買うのですが、今回突然の閃きが。確か毎年、この時期だった筈・・・。


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やっぱり。
堂々4ページにわたる駅弁の群れ。
行って参りました。
時節柄、小さい方の会場のみを目指し、直行直帰です。それでも久々に長く電車に乗れてちょっと嬉しかったです。


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二人のお弁当も九州のものにしました。旅情の一端を担えたかなと勝手に悦に入る私。



子供の頃のお正月には、デパートの催事場は不可欠でした。全国各地の郷土玩具展には父に連れられて行き、自分の好みのものも何か選べるのも楽しみでした。駅弁大会は大抵父が一人で行って家族分を買ってきたように記憶しています。
今回が第57回というのも納得です。

懐かしい記憶も甦らせ、これも父の供養の一つになっているのかなと思います。


久しぶりにたくさん文を作りました。
長文失礼しました。

光と影

市川市のアトリエ*ローゼンホルツさんにて、引き続き石を並べさせていただいております。
今年の展示場所は、2階の小部屋中心の予定です。アート作品と共に。


新年最初の石たちは、丸っこいもの。
お雑煮に入れるという丸餅の話からヒントを得ました(我が家は焼いた角餅)。


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水滴や水紋を思わせるような、ぷるんと瑞々しい石たち。


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光と影。お互いを引き立て合っているように見えたら嬉しいです。


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こんな机でもの思いに耽る時間を過ごしたい。
私自身の願望でもあります。



一部石のアップ。

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星々のようなシラー。少し見にくくてすみません。現物はもっと綺麗です。


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大きな虹。この虹は、この石に大きな傷あってこそのもの。内包物だらけのこの石の個性がとても好きです。


小部屋は日の光の入り具合で景色がまるで違って見えます。時間の経過もゆっくりお楽しみいただけたらと思います。

今月の歩み(前半)

1月も、早くも半ば近くまで過ぎました。
現在の年月日を記入する機会はまだありませんが、きっと間違えるであろう・・・と思えるくらいに新年の心構えはできておりません。

そんな私の僅かな記録を。


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最後の画像、「民芸お菓子」については
また改めて綴りたいと思います。

年始の石

2022年に入りました。
今年もどうぞよろしくお願い致します。


新年の石馬鹿はガーネット。一月の誕生石です。
そして、私が殊に好きな石。結晶の形に惹かれています。


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奈良県吉野郡産のアンドラダイト・ガーネットです。ガーネットは成分の違い等から多様なグループに分かれています。その一種。
和名は「灰鉄柘榴石」です。


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横顔たち。


真っ黒な結晶のようだけれど、光を当てると仄かな赤やオレンジの色味が分かります。
強そうでちょっと地味そう。でも燃える心。そんな印象を受けます。
ガーネットは比重が高いので、やや大きめのこの石はずっしり重いです。そこも安定感があって好ましい。いろいろな中身が詰まっていて、対話ができたら充実の時間を過ごせそう。
石の話でないみたいな比喩です。石馬鹿の申すこと、ご容赦下さい。


暗赤色が一番有名と思われがちなガーネット、実は青以外の色はほぼ全て存在します。輝きが強いので、磨くと小粒でもかなりの存在感を発揮できます。
秘めたる技(?)を持つガーネットたち。好きなので当店にも集まりがちですが、更に追い続けます。もちろん他の石たちも。


今年も引き続き、ご予約での営業体制です。
ご面倒をおかけしますが、よろしくお願い致します。

年末の石

早くも年末の時期となりました。

毎年振り返ってみると、一年の間に年初には思いもかけないことが起こっているなあとつくづく思います。
良いこともそうでないことも。
喜ぶべきことは喜び、悲しむべきことはきちんと悲しむ、その心の動きを疎かにしてはいけないと思います。でも一方で、予想だにできないこともいつも平らかに受けとめられるようでありたい。そんな心情の年の瀬です。


今年も多くの方との出逢い・交流がありました。感謝申し上げます。




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いただいた枝々。店内に爽やかな風を吹き込んでくれるようです。冬であっても、いえ冬だからこそ嬉しい清々しさです。




今年最後の石馬鹿シリーズ。


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群馬県下仁田町産のカルセドニー(玉髄)。
大雑把に括れば水晶の仲間の一つです。


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外側はごつごつとして無骨な姿ですが、


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内側には無数の細かな結晶が光っています。石を動かすと、ちらちらと煌きます。ちょっと星々みたい。
断面部の半透明な摺りガラスのような質感も風情を感じます。

こんな人でありたい。そんなふうに私に思わせてくれる石です。



皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さいませ。

静かな時間

12月初めての記事となります。もう半ばを過ぎ、新年も近いとは・・・戸惑ってしまいます。


11月はイベント参加の重なる月でした。今更ながらではありますが、ご覧下さいました皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。



今日は寒い寒い雨の日。
ふと思いつき、ロウソクの火を見つめるひとときを作りました。


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炎そのものにも焦点を合わせたい。

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炎に集中していると、不思議といい気分。
ゆらぐ炎を眺めることは、精神的にも良いのだとか。

焚火のことも懐かしく思い出しました。
詳細は忘れてしまいましたが、小学生のときに放課後の校庭で何人かと遊んでいて、夕暮れ近くに焚火を囲んだ記憶があります。皆で何だか静かに炎を見つめたあの時間は、決して夢ではなかった筈。


こうして綴っているうちに、空は明るくなりました。寒いのは相変わらずですが。


静かな心。静かに嬉しい。

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