「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

第三回 新解さん友の会・その二

暑いです。暑いということはそれだけで疲れます。


体調がどうにもぱっとしない中でもラジオ体操によろよろと向かい、
盆踊りでは近年になく踊りました。記憶に従ってやや無意識的に体を動かすと、
なかなかに気分がすっきりすることを今更ながらに自覚しました。


皆様もどうぞお体にお気をつけてお過ごし下さいますように。





さて、なかなか進まない「新解さん」の続きです。




前回記事でざっくりと挙げた分類ごとに簡単に実例等をご紹介したいと
思います。



言葉・語釈・用例等は全て『新明解国語辞典』(三省堂)の
 第一版〜第七版より引用させていただいています。





▼昔の言葉シリーズ

 「糅」(かて) ( ←この漢字自体を今回初めて知りました。)

 「あっぱっぱ」 等、今はあまり使われなくなってきている言葉達です。

 それぞれの意味については、ぜひお手持ちの辞書で
   ご覧になってみて下さい。


 一同で未知の言葉に感心したり、ああ、あったあったと懐かしがったり。
 このシリーズの言葉を選ぶとき、少し大袈裟に言うならば自分が生きてきた
過程というか痕跡があらわになってくるような感もあります。
 こういう言葉たちこそ、使用頻度が低くともできるだけ長く辞書内に
留まってほしい存在だなあと私は思いました。





▼食シリーズ

 毎回何かしら登場し、盛り上がるジャンルの一つです。
 食品・食材の説明に「美味」「おいしい」と入るかどうか。
それは版によって消えたり復活したりすることもあり、
常に気が抜けません。「新解さん」の嗜好が色濃く出るところです。
 
 
 今回私が注目したのは、時節柄ともいうべき「鰻」でした。
 「鰻重」も「鰻丼」も項目として独立しているのも何だか可笑しいし、
 鰻丼に至っては「どんぶりに入れた飯の上にウナギのかば焼きを・・・」
 →「熱い飯の上にウナギの・・・」と第三版から変化しています。
 これだけ拘るからには、きっとかなりの鰻好きなのでしょう。
   ※もともと「新解さん」には魚介好きの傾向あり
 


 また、料理の名称については、調理法を細かに説明しているものが
多々あります。
 上記の鰻はその典型かと。


 「鰻重」 かば焼きを上の重に、飯を下の重に別別に入れて供する料理。
     〔一つの重箱で、飯の上にかば焼きを載せた物をも指す〕

 
 他にもたくさんあります。デザート系にも及んでいます。


 食べることだけでなく、作る過程にも相当な関心とこだわりが窺える
新解さん
 やはり説明が細かいのは、好きなメニューなのだろうなあ・・。



 そんなことを想像する時間が、私はとても好きなのです。
 食シリーズは、どなたでも比較的気軽に楽しめる世界のように感じます。






▼お金シリーズ

 こちらも話題になりがちです。
 用例に使われる金額例が具体的で、妙な真実味を帯びていること、
 お金の貸し借り問題に厳しい姿勢、お金がないことにも手厳しいことなどが
 ちらちらと随所に表れています。


 「すかんぴん」 大変貧乏で、からだ以外に何も持たない様子(人)。


 「ある時払い」を「前近代的な支払い方法」と説明していることなども、
 なかなかに手厳しいです。
 新解さんは常識ある人のモデルを自らの中に持っており、それを基準にして
 弁じるといった姿勢があるのでは、という指摘は的を射ていると感じました。
 このことは後述のジャンルにも繋がっています。





▼うちの子どもシリーズ

 自分の体験に照らし合わせて共感させられるジャンルです。
 そう、子持ちといえばどうしても私も関わります。
 他の方が発表した「言い訳」「強情」等の語釈に納得しつつ、
ふと目に入った項目は「めそめそ」。


   〔女性や子供などが〕何かというとすぐに涙を見せて、沈んだ調子で
   泣き続ける様子。


 その通り!!と声を大にする私。辞書にこのように言ってもらえると、
 ね〜、嫌よね〜、大変よね〜といった感じで何だか励まされる思いすら
感じてしまいます。
 うんざりしているのは私だけじゃないんだ・・・。


 やはり辞書は大切です。 いや、それはちょっと違うかも・・・。





▼地域シリーズ

 私は今まで着目できていなかったジャンルでした。
 今回ご指摘があり、目を開かれる思いがしました。
  
 一例です。


 「めげる」の意として

  一 欠けて、こわれる
  二 気を落とす。気が弱る。ひるむ。 ←私はこちらしか知りませんでした。


 とありますが、「一」に第四版から〔東京から中国四国までの方言〕との
説明が追加されています。
 このような注釈は他にも見られることもまた、今回初めて気付きました。
 それも、例えば「熊本」→「九州西部」などと版によって細かく
変化しており、改めて新解さんの緻密な作業に敬服といった感じでした。




 関連して、「県花」の例として


  富山県はチューリップ(二版〜) → 山形県はベニバナ(六版〜)


 という変化があったことも面白かったです。
 何版かの改訂の際にはまたどこかの都道府県に変化するのか、
大変に楽しみです。





このあたりで一区切り。次回に続きます。


これまでもこの先も、いろいろ説明不足だったり、欠落したりという点が
随所にあるかと思います。
友の会ご参加の皆様、お気付きの点がございましたらコメント欄等にて
ご指摘下さいませ。
どうぞよろしくお願い致します。

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