「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

言葉の力

ある言葉、ある文章がずーんと心に響くことがあります。
共感したり、意表を突かれたり、いろいろに作用して、じわりじわりと
効き目を表してくるよう。目や耳からの薬といえるかもしれません。






「低いハードルから始めないと、私たちは乗り越えられないじゃない。」


これは次女の発言です。
低くないと、足引っ掛けちゃうとのことです。
足を引っ掛けまくりの私たち一家ですが、確かにこういう気持ちを
忘れずにいないと、気持ちが刺々しくなりがちな気がします。


かっこいいようにもみえますが、この言葉のきっかけは些細なことすぎて
ちょっと披露できない・・・。







「不幸がだしぬけに入って来た時、驚くことは愚だ。不幸は、来る事になっていたお客なので、別に驚くべきものではない。それに不幸は必ずいいお土産を持って来ている。それを人間が受け取ってしまえば不幸は直ぐに帰って行く。不幸が来たら驚かずに落ついて居て、その手から素晴しい宝石を貰うべきだ。」


森茉莉さんの「思った事」より
『幸福はただ私の部屋の中だけに』 森茉莉 早川茉莉 編、ちくま文庫



好きな方でありながら、ちょびちょびとしか読み進められずにいたのですが、
ラスト近くでとりわけどかんときました。



なお、この文庫本の本文ラストは、上記の最後の一文とほぼ同じ内容が
綴られています。


「不幸が来たなら、驚かないで、その手の中から、『ほんとうの幸福』という、光る宝石を受け取らなくてはならない」


「真直ぐの道」より



何しろ石絡みの文ですので、重ねて引用させていただきました。








最後は本一冊まるごとで。
『おめでたい女』 鈴木マキコ、小学館


既に以前に読んでいるのですが、一昨日の夜更けに改めてじっくり通読して
その世界にどっぷりと浸りました。
苦しくも強いその世界は、力強いエールを与えてくれるように
感じられるのです。



いつも身近に風が吹いていてほしいというくらいに「風」というものが
好きな私は、主人公が自転車を漕ぐ場面がとても好きです。


「深呼吸をします。風が吹いている。顔を上げます。笑ってみます。今、『ロッキーのテーマ』が、心の中で大きく鳴っています。」


読んでいて、風がとてもリアルに感じられます。
まさに今、自分の周りでも吹いているみたいに。







生身の人々に助けていただくのはもちろんですが、言葉という文字の力にも
日々ずいぶんと助けられています。


誰かの心をえぐってしまうような悪しき力はいらないから、
誰かの力になれるような言葉を生み出せる語彙力・表現力・そして魂を
私もまた自分のものとしたいです。






心地よいなあと思って撮影。
こういうところに一人存分に佇めた幸運が嬉しかった。





光はどこにでも存在するはず。
光の中で見る影もまた、綺麗だなあと思います。

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