「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

素敵なさよなら

読みたくて買ったのに、その後なかなか読み進められない本。私には結構あります。いずれ買おうと思って日が経つと、書店で見かけなくなってしまう本も案外多いので、今のうちに・・・と思ってしまうせいもあります。

そのうちの一冊をやっと読了しました。

『緑の庭で寝ころんで 完全版』(宮下奈都、実業之日本社文庫)。初めの方を読んだきり、2年半近くも寝かせてしまいました。主としてエッセイ集です。

『スコーレNo.4』で出逢ったこの作家さんは、同世代で子供の数も同じ、その共通点が心にこんなに響くとは。三人の子供たちのまるで違う個性、子供たちの成長への自分の気持ち、それからそれから・・・。受験生の卒業と入学の話など、まさに今読めて良かった!というタイミングでした。何度か泣きそうになりました。この方の小説の細やかさに惹かれてきましたが、その理由が解明されたような気持ちでもあります。

私にとって印象的だった文章の中から一つを。

「この連載がいつまで続くかわからないけれど、現在高校二年生の息子が卒業するときに一緒に卒業するのがいいと思う。来年の春の話だ。息子はこの家を出ていくだろうし、むすめも高校生になる。緑の庭にひとりだけ残った子を書くのは、彼女にとっても窮屈なんじゃないかと思う。」

なんてさよなら上手な方なのだろう。私と全く違う。その言葉通りにこのエッセイの連載は終わりを迎えています。

別れが細かく続いて少々感傷的になっている私には、今出逢うべくして出逢った文章の集まりでした。支えてくれてありがとうございますとお礼を述べたいです。

終わりは始まり。さよなら下手も、新たな日々を楽しまなければ。

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