「石と古本 石英書房」の日々

お店の最新情報と、石や本、お散歩その他、店主の好きな物事について綴ります。

佐伯一麦さんのこと

仙台の「book cafe 火星の庭」で、目を惹くイベントがあったことを
知りました。こちらも、いつか訪れたいお店の一つです。


http://www.kaseinoniwa.com/cafe/2009saeki01.html


「夜の文学散歩」。『バベットの晩餐会
(イサク・ディーネセン作、ちくま文庫)を佐伯一麦さんと
語る集いだったようです。さすが地元、と思いました
(佐伯さんは仙台出身)。
羨ましい・・・。好きな作家の一人なので。


初めて読んだ佐伯さんの作品は『ア・ルース・ボーイ』(新潮文庫
でした。
17歳の元高校生同士の、生まれて間もない子と三人での
生活が軸になった話、しかもその子は二人の間の子ではない
・・・と、簡略に説明しようとするとどうも違うトーンに
なりかねないのですが、そうではなく
私はむしろ大変清々しい空気を感じました。


登場人物たちが誠実に、懸命に生きようとしているのを感じる
からかもしれません。みっともないところにも正直だし。

でも、一番の魅力は仕事の描写が非常に生き生きとしている
点ではと思っています。
自伝的要素が濃いので、主人公が就いている仕事は
作者自身も経験しています。それ故描写がリアルなのでしょうが、
単にそれだけでなく、その仕事に誇りを持っている感じが
伝わってくるように思えるのです。
新聞配達、電気工事と私の知らない世界ばかりであるためもあってか、
私はまずそちらに魅了されました。


その後読んできた作品も、いわゆる私小説のごとく
佐伯さんご本人の体験らしきお話ばかり(まだ全ての作品を
読んではいませんが)。でもますます引き込まれていきました。
新潮文庫『一輪』の「解説」で、細貝さやかさんが同様のことを
書いていらしゃるのには思わず「うん、うん」と呟いてしまった
くらいです。


後に、佐伯さんは干刈あがたさんと交流があったことを
知りました。
干刈さんがご長男の進路について、佐伯さんに相談されたことも
あったようです。
自分の好きな作家同士にお付き合いがあると、
何だか嬉しくなってしまいます。
今年始めに出た、佐伯さんの『芥川賞をとらなかった名作たち』(朝日新書
でもそのあたりに触れていらして、ミーハーにも喜んでしまいました。


お店で自分の愛好する作家関連の催しをする・・・
そんな企画ができたら本当に素敵だと思います。

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